その栄光の裏側のプライヴェートな私生活にスポットを当てた作品です。母親のリリーや最初の妻のオードリーとの生活を中心に、ビリー・ジーンやボビーといった女性たちとの関係にスポットが当てられています。
ヒット街道を歩むスターとしての顔の裏側は、家族との愛憎、そして、蝕まれていく健康との葛藤がありました。ハンクは、1953年、29歳という若さでこの世をさります。
けれども、ハンクの歌は、永遠に歌い継がれていくでしょう。
?1シングルが、11枚、トップ・テン入りしたシングルを35枚残しています。
ハンクの曲をカヴァーしたミュージシャンは、エルビス・プレスリー、ボブ・ディラン、ジェリー・リー・ルイス、マール・ハガード、ジーン・ヴィンセント、カール・パーキンス、リッキー・ネルソンなど、枚挙に暇がありません。
私は、7インチ・レコードも収集しています。
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『サタンタンゴ』は、上映時間7時間18分の大作でした。社会主義時代末期のハンガリー。舞台は大平原の広野にある寂れた農場。農場は解散することになり、農業労働者たちは1年分の給金と退職金を手にしていました。社会の最底辺の者たち。まったく先の見えない生活…。そこへ死んだはずのならず者イミリアーシュが帰ってくる。イミリアーシュは悪魔か救世主か…。という作品で、私は、2019年に劇場で観た12本の映画の中で、『サタンタンゴ』をベストワンに選んでいました。
さて、『ヴェルクマイスター・ハーモニー』は、『サタンタンゴ』よりもさらに難解な作品でした。
「舞台はハンガリーの荒涼とした田舎町。天文学が趣味のヤーノシュは老音楽家エステルの身の回りの世話をしている。エステルはヴェルクマイスター音律を批判しているようだ。彼らの日常に不穏な“石”が投げ込まれる。広場に忽然と現れた見世物の“クジラ”と、”プリンス“と名乗る扇動者の声。その声に煽られるように広場に群がる住人達。彼らの不満は沸騰に達し、破壊とヴァイオレンスへと向かい始める。」(映画チラシより)
広場に集まった労働者たちが、病院を襲い患者たちを滅多打ちにするのはなぜか?弱者がさらに弱い患者を襲うという、この理不尽さは何か?謎が謎を呼んで、理解不能のラストを迎えます。扇動者の声によって、人々が対立していく様は、見事に現在を予兆しています。
病院のベッドの上で、言葉を失ったヤーノシュは、いったい何をされたのか。
『サタンタンゴ』を観た後にも感じたことですが、『カッコウの巣の上で』、『未来世紀ブラジル』と同じように、世界の破滅を暗示しているようです。
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「雪山の山荘で、男が転落死した。男の妻に殺人容疑がかかり、唯一の証人は視覚障がいのある11歳の息子。」映画チラシより
舞台はアルプス山脈の麓グルノーブル、人里離れた雪山の山荘に住むのは、教師をしながら作家を目指すサミュエル、妻のサンドラはドイツ人のベストセラー作家、交通事故で視覚に障がいのある息子のダニエル、そして愛犬のスヌープの家族3人と1匹で暮らしていました。
ある日、ダニエルがスヌープの散歩から戻ると、山荘近くの雪の上で頭から血を流し横たわる父親を発見します。この時、山荘にいたのは、サミュエルとサンドラだけでした。事故か、自殺か、他殺か―殺人となれば、状況から容疑者はサンドラしかいません。「あの日、あの場所で、いったい何があったのか?」
夫婦愛、幸せな家庭に何があったのか、裁判が進む中で夫婦の秘密や嘘が暴露されていきます。ドイツ人のサンドラは、法廷でフランス語では思いが伝えられず英語で話す場面が出てきます。そのもどかしさと真実を知りたいという思いが、私たちを長い法廷劇から目を離させません。そして、ダニエルの法廷での最後の証言は…。
サンドラ役のザンドラ・ヒュラーの演技が圧巻です。そしてスヌープも重要な演技を見事に披露しています。
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『ザリガニの鳴くところ(Where the Crawdads Sing Delia Owens)』
劇場上映を見逃した作品をDVDで鑑賞することは時々ありますが、『ザリガニの鳴くところ』もそのひとつです。実は原作を先に読んでしまったことを後悔しています。原作があまりにも素晴らしすぎて、映画の印象が希薄になってしまいましたが、映画として魅力さる作品に仕上がっています。
「湿地帯で発見された青年の変死体、容疑者は、“そこ”に暮らす少女」というキャッチコピーだけでも惹かれる作品です。この作品には、自然と人間の共存、家族愛、人種差別、そして極上のミステリーと、全てのものが含まれています。お勧めの作品です。
『フォール(FALL)』(2022年アメリカ映画)
これも劇場公開を見逃した作品です。
山でのフリークライミングで夫を亡くしたベッキーを立ち直らせようと、親友のハンターが新たなクライミングの計画を立てます。今は使われていない地上600mのテレビ塔をターゲットとして選んだ彼女たちは梯子を上り続け、なんとか頂上へ到達します。
しかし、梯子が崩れ落ちて…。と何とも怖いお話です。手に汗握り画面から目を話すことができません。
『アウシュビッツのチャンピオン(The Champion of Auschwits)』(2020年ポーランド映画)
以前、『アウシュビッツの生還者(SURVIVOR)』(2021年カナダ、ハンガリー、アメリカ映画)という映画を観ました。ホロコーストを生き残りアメリカに渡ってボクサーになるという実話を基に作品でした。
今回の作品『アウシュビッツのチャンピオン』も実話でモデルになったボクサーは同一人物かと思いましたが、別人のようです。
第2次世界大戦中のアウシュビッツ強制収容所で、絶望的な状況の中、ボクサーとして闘い続けて生き残り、戦後故郷のワルシャワへ帰りボクサーとして生きた男の物語です。
それにしても1年に何本もナチス・ドイツの蛮行を描いた作品が公開されています。戦争の悲劇を忘れない、二度と同じ過ちを繰り返さないという思いが伝わってきます。
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子どもたちとの出会いの中で、悩みながらも子供たちを支援し、自分自身も成長していく様子を描いた作品です。
親による虐待や子殺し、子どもたちの貧困といじめ、そして子どもたちを取り巻く孤独、子どもたちの未来に赤信号が灯ってしまった現代社会を浮き彫りにした作品です。地域社会と家族の再生が求められています。
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孫娘と祖父そして棺に入れられた祖母の3人がトルコ南東部のアナトリア地方からシリア国境を越えた故郷を目指すロード・ムーヴィーです。孫娘と祖父の間にはほとんど会話がなく、黙々と旅が続きます。ヒッチハイクでトラックに乗せてもらったり、時には棺を引きずりながら歩く過酷な旅が続きます。旅の途中で出会う人たちから、まるで神の啓示のような言葉を授かりながら進んでいきます。
トルコは、シリア、アフガニスタン、ロシア、ウクライナから多数の難民が流入しています。主人公たちもシリアからの難民で、祖父はアラビア語を話し、トルコ語が理解できません。孫娘が通訳の役割を担っています。
物語の終盤、国境が近くなるにつれ警備が厳しくなり、国境を越えてくる難民が多数現れてきます。
孫娘と祖父は、祖母の亡骸を無事に祖国に埋葬することができるのか?二人の心の融和は訪れるのか?登場人物たちの人間模様と絵画のようなトルコの風景が忘れられない作品です。
今年はトルコと日本が国交を樹立してから100周年になります。ヨーロッパとアジアの架け橋トルコに注目する年になりそうです。
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物語は、巨大リーゼントととんがりブーツの奇妙なバンド「レニングラード・カウボーイズ」が、故郷のシベリアからアメリカに渡りメキシコまでを旅するロード・ムービーです。
最初はポルカを歌っていましたが、アメリカ各地の影響を受けて音楽性を変えていくバンドのようすがユーモラスに描かれています。どこに行っても評価が芳しくないバンドですが、テキサスのバーで「Born to be Wild」を歌ったときは最高に受けました。やがてメキシコで成功し、売れっ子バンドになります。
『レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う』(94年フィンランド 監督:アキ・カウリスマキ)
続編は、メキシコで成功した「レニングラード・カウボーイズ」が、故郷シベリアに帰るロード・ムービーです。ニューヨークからフランス、ドイツ、ポーランドと、バンドの破天荒な旅が続きます。
「レニングラード・カウボーイズ」は、もともと「スリーピー・スリーパーズ」というバンド名で活躍していましたが、映画出演をきっかけに 「レニングラード・カウボーイズ」というバンド名に変えて活動をしています。ギター、ベース、ドラムスの一般的なロック・バンドの構成に加えて、ブラス・セクションも加えた大所帯のバンドです。映画では、アコーディオンやバラライカなどの楽器が加わり楽しい演奏を聴かせてくれました。バンド自体が魅力的です。
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1月5日、御茶ノ水DUの100円コーナーで見つけたシングル盤?は、1969年公開のフランス映画『さすらいの青春』のオリジナル・サウンド・トラック盤からシングル・カットされたものです。当時、こんなレコードが出ていたとは知る由もありませんでした。レコード棚には、LP盤がありました。LP盤は、“音楽と語りで綴る”とあるように、劇場さながらのセリフが収録されています。
映画のストーリーは思い出せませんが、ヒロインのブリジット・フォッセーは「禁じられた遊び」の名子役でしたが、美しく成長した姿に憧れたものでした。物語は、若い男女が何人も登場する恋愛もので、ブリジットは哀しい結末を迎えるヒロインでした。大好きな映画のひとつでした。
レコード・コレクターは、こういう楽しみもあるんですね。
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我が息子の変わり果てた姿と対面した母メイミーは、この陰惨な事件を世に知らしめるため、常識では考えられない大胆な行動を起こします。メイミーは、世界に殺害の残忍性を示すために、彼の顔が見えるように棺を開いたまま葬儀を行いました。そんな彼女の姿は多くの黒人たちに勇気を与え、一大センセイションとなって社会を動かす原動力となっていきます。
この事件は、アフリカ系アメリカ人の公民権運動を大きく前進させるきっかけとなった重要な出来事でした。ティルの8周忌にあたる1963年8月28日、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアはワシントン大行進において、歴史に残る「I have a Dream」のスピーチを行っています。前座として舞台に上がったボブ・ディランは新曲「エメット・ティルの死」を披露しました。自由と平等の国アメリカの偽善を赤裸々に描写する曲を白人青年が歌ったことに勇気を得た、サム・クックは公民権運動の勝利を謳った名曲「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」を翌年発表します。
21世紀に入り、2020年「ジョージ・フロイド殺害事件」を契機にBLM(ブランク・ライヴズ・マター)運動がアメリカ国内のみならず、SNSを通じて日本を含む全世界に拡大しました。黒人をはじめ多くの人々が声を上げた大規模な抗議行動によって、2022年3月、人種差別に基づくリンチを連邦法の憎悪犯罪(ヘイト・クライム)とする「エメット・ティル反リンチ法」が成立しました。エメット・ティルの殺害から、60年以上の年月をかけてアメリカ社会に変革をもたらしました。
この映画は、「エメット・ティル殺害事件」初の劇映画化作品です。
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世界から絶賛されるライカート監督、彼女の長編7作目となる『ファースト・カウ』でやっとライカート監督作品が日本の劇場で初公開されました。
物語の舞台は1820年代西部開拓時代直前のオレゴン州。アメリカン・ドリームを求めて未開の地にやってきた料理人のクッキーと中国人移民のキング・ルー。共に成功を夢見る二人が意気投合し、やがてある大胆な計画を思いつきます。それはこの地に初めてやってきた“富の象徴”である、たった一頭の牛からミルクを盗み、ドーナツで一攫千金を狙うというビジネスでした。ドーナツを通して芽生える二人の友情とアメリカの原風景を切り取ったような美しい映像美が魅力です。
犯罪行為に手を染める二人ですが、持たざる者が街の権力者である仲買商の牛からミルクを盗むという行為に、一種の爽快感を禁じ得ません。物語の終盤では、この行為がいつまで続けられるのかとハラハラドキドキさせられます。
交易所は賑やかな前哨基地で、先住民やチャンスを掴もうと集まった開拓者が集まり、まさに人種のるつぼです。西部開拓時代以前はこんなだったかと想像が膨らみます。
動物が主役の映画としては、2022年に公開されたロバが主役のポーランド、イタリア映画『EO(イーオー)』(監督:イエジー・スコモリスキ)を思い出しました。主役の二人は、『真夜中のカウボーイ』(1969年公開アメリカ映画、監督:ジョン・シュレシンジャー)のジョーとラッツォを彷彿とさせます。
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イギリス・ヨークシャーの小さな炭鉱町を舞台に、主人公ビリーは、母親と義兄の3人暮らしをしています。母親は外で働き、荒くれ者の兄は炭鉱で働いています。兄とはそりが合わず、学校でも友だちはおらず、先生たちはすぐに体罰を与えてきます。
どこにも行き場のないビリーの唯一の楽しみはヒナで手に入れたハヤブサ「ケス」を飼育することです。ビリーは夢中になって「ケス」を育てます。そのなビリーを認める先生が一人だけいて、それが物語の救いになっています。
それにしても兄との関係が最悪で、それがエンディングの悲しい事件へと繋がっていきます。希望のないビリーの生活をリアルに描いて、観ている側も気が滅入ってしまいます。
労働者階級や移民、貧困などの社会問題にスポットを当てる監督の作風がすでに確立されています。
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私が大好きなフィンランドの映画監督アキ・カウリスマキの最新作『枯れ葉』は、ヘルシンキを舞台に、孤独さを抱えながら生きる女と男が主人公、理不尽な理由から仕事を失う女と酒に溺れながら工事現場で働く男がカラオケ・バーで出会うところから物語が始まります。
互いに惹かれあいながら、不器用さとさまざまなアクシデントに見舞われて結ばれない二人がはたして結ばれるかというラブ・ストーリーです。例によってカウリスマキ作品には、美男美女は登場せず、中年の男女が主人公ですが、観ているうちにいつの間にか作品に引き込まれてしまうのが、カウリスマキ作品の特徴ですね。
6年前に引退宣言をしたのに、再びメガホンを取ったのは、なぜか。たびたびラジオからロシアによるウクライナ侵攻のようすが流れてきます。人間にとって戦争よりも小さな幸せの方が大事だということを描きたかったのではないでしょうか。
劇中に流れる数々の音楽が、主人公たちの思いを見事に表現していて、まるでミュージカルのような趣です。冒頭、「竹田の子守歌」が流れてくるのには、思わずニヤッとさせられました。
初デートで観る映画が「ゾンビ」というのも笑わせます。ユーモアもあちこちに散りばめられた心に沁みる作品です。
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伊東監督は、2004年、アメリカの太平洋核実験によって日本のマグロ漁師が被爆した事実に出会い映像化、映画『放射線を浴びたX年後』『放射線を浴びたX年後?』を製作、芸術選奨文部科学大臣賞など多数受賞しています。
今回の作品は、1950年代から60年代にかけて、アメリカ・ネバダ州で実施された核実験による、アメリカ大陸の放射能汚染を追っています。子どもを被爆から守るために女性たちが始めた「乳歯調査」を中心に取材し、2022年夏に米国内の被爆者、研究者ら30人に行ったインタビューをもとに、今も続く放射能汚染の現実を伝えています。
上映後の伊東監督と井戸川克隆双葉町元町長の対談の中で、伊藤監督は、この作品をアメリカ向けにつくったこと、日本で上映するために日本語字幕をつけたと説明されました。
核兵器の開発過程でアメリカ大陸全域が放射能汚染していることを、アメリカの人たちは全く知りませんでした。核実験に関わり被爆した元軍人は、20歳前後の若者だった多くが亡くなっています。
世界で最初に核兵器をつくり、今なお核大国であるアメリカの国民に放射能汚染の実態を伝えなければならないという思いで、この作品をつくったと語られました。この映画は、全国で自主上映中です。
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主人公のジョイは、泥棒家業の夫トムの暴力に怯えながらの生活を強いられています。夫が投獄されてからも女手一つで、幼い子どもを育てています。生活のために水商売で生計を立てており、新たにできた恋人も泥棒ですぐに投獄されてしまいます。
息子を抱えたジョイの生活は、映画のタイトルどおり「Poor Cow(貧しい牝牛)」のようです。ケン・ローチ監督は、そんなジョイたちの生活をリアルに描いています。
主演女優のキャロル・ホワイトは、68年カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭主演女優賞を受賞しています。ドノヴァンの楽曲も3曲が、劇中の重要な場面で効果的に使われています。
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クラシック音楽やアイルランドの民族音楽に彩られた映像の美しさは、キューブリックの面目躍如です。
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